愛知では江戸時代ごろから、知多半島の両岸や西三河の海岸地方で酒造りが盛んになりました。今も知多半島には、県内最古の酒蔵をはじめ、日本酒の歴史を感じさせる7蔵の酒蔵が並びます。
ちょうど今は、日本酒の旬と言われる寒造りの真っただ中。低温でじっくり時間をかけて熟成させることで、深い旨味と華やかな香りが生まれます。そして、この寒造りの酒を味わうなら、冬の海が育む新鮮な海の幸と一緒に楽しむのがぴったり。搾りたての日本酒と旬の肴の組み合わせは、思わず笑顔になる至福のひとときです。
蔵開きの季節も間近。冬の知多半島は、日本酒ファンにとってワクワクが止まらない特別なシーズンです。
知多半島の酒蔵

❶原田酒造
安政2年(1855)創業、代表銘柄「生道井」「衣が浦若水」
【春の試飲会】2026年4月4日(土)・5日(日) ホームページ
❷中埜酒造
弘化元年(1844)創業、代表銘柄「國盛」
隣接する國盛 酒の文化館で酒造りの歴史紹介や試飲が楽しめます ホームページ
❸盛田金しゃち酒造(旧天埜酒造)
弘化5年(1848)創業、代表銘柄「金鯱」「初夢桜」 ホームページ
❹伊東合資
天明8年(1788)創業、平成12年(2000)廃業、令和3年(2021)再興、代表銘柄「敷嶋」
【蔵開き】亀崎酒蔵祭 2026年4月11日(土) ホームページ
❺澤田酒造
嘉永元年(1848)創業、代表銘柄「白老」
【蔵開き】2026年2月21日(土)、22日(日) ホームページ
❻盛田
寛文5年(1665)創業、代表銘柄「ねのひ」
【蔵開き】2026年2月14日(土) ホームページ
❼丸一酒造
大正6年(1917)創業、代表銘柄「ほしいずみ」 ホームページ
稀少! 伝統的な槽搾りを間近に
1855年創業の原田酒造では、今ではほとんど見られなくなった伝統的な「槽搾り」によって酒を搾っています。今回、特別にその様子を見学させていただきました。
早朝6時。外はまだ真っ暗です。凛とした空気の中、寒造りの酒を搾る一日が始まります。
タンクから管を通して醪(もろみ)が送られ、杜氏の今泉克康さんの「ハイ」という一声を合図に、真っ白な酒袋が次々と満たされていきます。入れる量は、長年の経験で培われた杜氏の感覚が頼り。蔵の中には、やがて甘くやさしい日本酒の香りが広がっていきました。
原田酒造で行われているのは、昔ながらの圧搾方法を受け継ぐ「佐瀬式槽搾り」。現在主流の自動圧搾に比べ、非常に稀少な製法です。「佐瀬式」は古来の槽搾りを機械化したものですが、酒袋を積み上げたり、圧力を調整したりする工程は今も人の手で行われています。そのため、職人の感覚や経験といった〝良さ〟をしっかりと活かすことができるのだそうです。
醪を入れた袋は、まず自重によって自然に搾られ、そこから徐々に圧力をかけて最後まで搾り切ります。時間をかけ、ゆったりと進められるこの工程も、この製法ならではの特徴です。
「手間も時間もかかるため、吟醸造りなど限られた酒に使われることも多い搾り方ですが、うちの蔵では全量をこの方法で行っています。手造りならではの旨味があって、気に入っていますよ」と、原田酒造6代目の原田晃宏さん。

槽の中で行っているのは、槽に均等に圧力がかかるよう酒袋を丁寧に積み上げていく作業。
その一つひとつの動きから、長年培われた技と経験が感じられます

仕込みタンクの中の醪。甘い香りが広がります

手作業で醪を袋に入れていく、専務の原田直季さん(手前)と杜氏の今泉克康さん(奥)

原田酒造6代目の原田晃宏さん
自重で搾られる「あらばしり」、バランスのよい「中取り」、力強さのある「責め」。この3段階を経ておいしい新酒が生まれます。原田酒造の新酒は「あらばしり」と「しぼりたて」として、冬の旬の味わいを飲み比べできるのが魅力です。
古式の酒造りがますます稀少になる今、知多半島の冬ならではの一杯として、旬の海の幸とともに、じっくり味わいたい日本酒です。

特別純米酒 【あらばしり】
槽口から流れ出る最初の「あらばしり」。瓶内二次発酵の発泡感が際立つ無濾過生原酒です

特別純米酒 【衣が浦若水しぼりたて】(季節商品)
新米で仕込んだ新酒。しぼりたてならではの、ピチピチとしたフレッシュな味わいです

2階の槽に積み上げられた醪袋から、重力にまかせて滴る酒。 1階のタンクへと静かに集まり、爽やかな香りが満ちていきます

槽搾り全景。仕込みタンクの醪は2階の槽(ふね)へ送られます
1滴1滴滴り落ちる 酒の雫を味わう 「雫しぼり(袋吊り)」は2月に
2月中旬頃には、雑味が少なく透明感のある澄んだ味わいと、華やかな香り、やわらかく上品な口当たりが楽しめる、希少な「雫しぼり」も行われます。醪を酒袋に入れて吊るし、その重みだけで滴り落ちる雫を集め、自然に任せて時間をかけて搾る製法ならではの味わいです。

純米吟醸 【吟雫】
酒袋から滴る雫だけを集めた無濾過生酒。やさしい甘みが広がります
取材協力
原田酒造合資会社
東浦町生路坂下29
☎︎0562-83-5171
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